君の人生や蓄積された経験描写された視界をすべて君自身で補完できると思ってはいけない解れはいつもそういった部分から広まっていきいつしか君の心臓を食い破ってしまう。そこから生まれた不恰好な欲は僕の足元に跪いて許しを乞うのだでも絶対に許してあげない絶対に。
年が明けて最初に手にとった本がバタイユだったことに複雑な意味と深い啓示を感じたが同時に自分の中にある粘着質で澱みきった液体が全身を覆い始めたので慌てて手を離しその勢いで冷蔵庫からほうれん草のおひたしを掴み取って貪り食らった。その瞬間ぴいんと張り詰めた空気が室内を蹂躙したが俺はそれを意に介さず無遠慮な独り言を呟きまくった。十二支を数えまくって、どうしてもネズミの次を思い出せず頭を抱えた。やがて煮詰まってしまった俺は外の風に当たり、突き刺さる、視線を感じる。その視線を想像の女に置き換え、おぼつかないコミュニケーションを図ろうとした、それも新しい言語において。両脇を気がふれたスピードで走り去っていく時間。会話は熱量を増し社会自由主義の話に差し掛かっていた。続けてデザインされたいくつかのイメージの話、種を蒔く淫売、異臭を放つ球体、画面に収まりきらない悲劇、冬の大陸を横断する貧しい母子、戦場で歌う知恵遅れの青年、なにしろ話題は尽きない。頭にはいつも抽象的で実体のない言葉が飛び交い、俺の性質がそれらを更に意味のない文章へと昇華させていくからだ。ようやく定義されかかった逸脱した思考ですらもう一度無重力環境で再構築されていき、奇怪なオブジェへ姿を変えてしまう。病に蝕まれている、その事実そのものが正常の、純潔の権利として君臨している。女は何枚かの枯葉と煙草のにおいを残して消えた。それらを深く吸い込み血液に浸透させる。ああ生きている、生きていく、でもそれを俺自身の権利で背負うことはなんと難しいことなのか。
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