[2008.12.19] ユアネーム

シクレノンの花を大量に積んだタンカーがアフリカへ向かう。救命ボートに乗った醜い少女とバイオリン弾きがチェスの駒を探す旅に出る。
螺旋階段でおいてけぼりのぬいぐるみ。高速道路に突き刺さる国旗、フランス、チェコ、ブルガリア。
地中海の港の娼婦達は誰かを汚したそのままの手でスープを飲んでいた。ギタリストの絵が描いてあるライターをやった。そして彼女達はオリーブ畑に火をつける。
「悪い子は居なかった、何処にも居なかったのよ」
そしてハッピーエンドマニアの文学家が暴動を起こす。もう誰も悲しむ事が無い様に。
人を数えながらコーヒーを飲む。ビジョンには顔を包帯でぐるぐる巻きにした裸の少女達が映っている。朽ち果てたテーブル。車輪の無い三輪車。コインロッ カーには大事な物を預けてはいけません。男と女が抱き合う、男と女が囁き合う、男と女が誓い合う。いやあね私たち年中何処でも求めあって、でもきっとこれ が愛情なのね。
「パートタイムで働いてるんだ」
「それで?」
「あの裸の少女達は全員パートタイマーさ」
「それで何が変わった?」
ロックミュージックが流れている。

いつしか醜い少女は美しくなっていた。アヒルが白鳥になるように、芋虫が蝶になるように、物語がハッピーエンドになるように。だけど駒は見つかっていない。これからもきっと見つからない。
救命ボートの上で、醜い少女とバイオリン弾きは抱き合う、醜い少女とバイオリン弾きは囁き合う、醜い少女とバイオリン弾きは誓い合う。俺はそれを見て、中学生みたいに、ただただ笑っている。

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