[2007.04.03] ある時男は言った「死は生における最大の救済である」ならば俺は死ぬ 君は生きろ

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顔のない女の子を拾った、それはもう3日も前の事だ。俺には何もなかったから、持って帰った。少し冷たい肌に毛布を掛けたら、彼女は「いきたい」って 言った。行きたいのか、生きたいのか、往きたいのか、分からないから暖かいコーヒーはこぼしてしまった。ウィル、それは意志で、だから彼女をウィルと名付 けた。

ウィルには表情が無い。表情が無いのは感情が無いのと同じである。食べたり飲んだりするための口があるが、決して口角を緩ませたりしない。俺は朝起きて ウィルの為に朝食を作るが、彼女が何を欲しているかは分からないのでとりあえずトーストとコーヒーを出す。彼女は黙々とそれを食べるが、喜んでいるかは分 からない。食べ終わるとソファーにボーっと座っていて、放っておけば一日中そのままの時もあった。だから最近は散歩に連れ出すようにしている。そこでも ウィルは俯きながら歩くから、俺は彼女の気を引こうと沢山の話をする。森にはブリキの兵隊達が居て、まるで森の動物のように暮らしているんだ、たまに行進 してる所だって見るよ。ほら、あそこに小さな小さな小屋があるだろう?あれが彼らの寝床さ。今度お邪魔してみてようか、それはそれは丁寧にもてなしてくれ るよ、何せ彼らは紳士だから。そうそう、あの大きな木を東に少し進んだ所に白雉の少年が住んでいてね、たぶんウィルと同じくらいの年だから仲良くなれるん じゃないかな。安心していいよ、昔まともだった頃に親を殺して気が狂ってからは気のやさしい少年だからね、おかしな話だろ?むしろ昔白雉で今がまともなの かもしれないね。

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