温もりを土に埋めようとぼくはスコップ片手に雑木林を歩く。閉鎖されたアスレチックのなかを通り抜け、もう長らく誰も迎え入れていないであろうベンチに腰掛ける。ようやく春の陽気が顔をのぞかせ始めたが、生い茂った木によって陽が当たらぬこの場所は、まだ少し肌寒い。それでも、いついかなる時も苛まれ続けている自己嫌悪による心労からか、ぼくは思わずウトウトしてしまう。目を閉じる、伸ばし放題の前髪を風が掻き分ける、そっと腕を組む、ふと赤子の姿を思い浮かべる、そこでぼくは眠りに落ちる。
夢のなかでぼくは鳥になっていた。だけど空を飛んでいる訳でも、恐ろしく高い場所で羽を休める訳でもなく、ぼくはコンクリートの道に横たわっていた。ひんやりしたコンクリートに体温や愛すべきものたちの色を吸い取られていく。記憶もまた、同じようにして失い続け、もはや再び飛ぶ力などどこにも残ってはいない。すると、ぼくの目の前を赤子がハイハイをしながら通り過ぎていく。遠くから母の呼ぶ声が聞こえる。その方向へ赤子は迷うことなく進んでいく。ああ、あれはぼくだ。あの赤子はぼくだ。赤子はどこまでもどこまでも進む。ぼくはたまらず空を見上げた。空から四月がぼくをじっと睨んでいた。
眠りから覚めると、ぼくは泣いていた。早く埋めなければ、ぼくは人間になってしまう。ぼくは人間にはなりたくない。絶対になりたくない。ぼくは声をあげて泣く、寒さに震えながら涙を流し続ける。
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