ミセスグリールのドレスは目もくらむような虹色である。大体の女がトリノで奇跡を祈る様にミセスグリールも例外ではない。上質な黒砂糖を神(三本足の)に捧げて奇跡と許しを乞うのだ。指の足りない炭鉱夫はそれを見ながらフォークミュージックを奏でる。
ド、シ、ド、ソ、ラ。
犬が欲しかったんです。とびきりおとなしくて、吠えなくて、求めなくて、変わらない。でも変わってしまった。僕らはハイになってしまった。
おい、なんだこのドロドロした海は。
ようやく抜け出した先には三本の塔と無数の小麦畑があった。そこでは一万人の村人がかくれんぼをしている。かくれんぼをしながら三本の塔に祈る。どうか変わりませんように、どうか救われますように。
「最後の一人になったら?」
「そいつが四本目さ」
そいつが四本目だ。
「昔ぷよぷよってゲームがあったじゃない?」
「ああ」
「あれ、私凄く弱かった」
「ああ」
「そういえば、あのぷよぷよしたのって、集まったら消えるじゃない」
「ああ」
「もうこの世界から消えてなくなってしまうのかしら」
「ああ」
「一つになるって、そういうこと?」
「ああ」
そして女は男の白い肩を舐める。黒砂糖の味のする、白い肩を舐める。
三本足の神様が講釈を垂れるために幼稚園児になり、ミセスグリールに勉強を教わる。
「み、せ、す、ぐ、り、い、る」
「そう、上手よ」
「み、せ、す、ぐ、り、い、る」
「その調子」
「ミセ、ス、グ、リイ、ル」
「ミセス、グリイル」
「ミセ、ス、グリ、イル」
「ミセス、グリイル」
「ミセス、グリイル」
「あら上手になったわね」
「ミセス、グリイル」
「それはそうと、あなたはなぜ三本足なのかしら」
「ミセス、グリイル」
「ひょっとしてあなたは神様なのかしら?」
「ミセス、グリイル」
「もしあなたが神様なら、聞きたいことがあるわ」
「ミセス、グリイル」
「一つになるって、どういうこと?」
ミセスグリール、消えてなくなるってことさ。