「君の悲鳴で夢から覚めたんだ」
「お前は高貴な嘘ばかりつきたがるね」
「爪を切ろうと屈んだときの横顔髪に隠れた横顔」
「アスファルトに頬を寄せてみてよ」
「海のような恐怖を鼻先に突き付けられ明日の罪を予約させられる」
「そうして僕は怖い人になってしまった」
「またひとつ歳を重ねて僕の意味は薄らいでゆく」
「もう一度言ってみて、本当の意味で」
「結局それは私に何ももたらしはしなかったの」
「(スプーンの持ち方を笑われている)」
「忘れることを忘れ、 いま僕は思い出すことを思い出そうとしている最中なんだ(声は反響しているが、その行き先はどうやら僕の耳ではない……)」
「――そうして、僕の小さな罪の和が毒に変わったとき、僕はそれを消毒しようとしたが、そのための手段を持っていなかった」
「またがらくたばかり集めているね」
「あなたにはそう見える?」
「だって宝物はピカピカ光っていなくちゃ」
「左の方が優しい目をしているわ」
「君の傘のさし方が丁寧だったから、僕はもうそれで充分だと思った」
「二人でネジを絞めよう二人で扉を直そう二人で天気を疎ましく思おう二人で知らない人に手紙を書こう二人で埋めてもう一度掘り返そう二人で生き方を探そう使い古された合図で」
「正しくは無いわ、でもきっと間違えてしまった訳でもないの、ただ少し明かりが足りなかっただけ、それだけよ」
「君は新しい単語を創りだしたその歓喜を少し過剰な瞬きの回数で僕に伝えた」
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